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[4月号]「原発被曝労働の実態」
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2013/06/02
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「原発被曝労働の実態」
被曝労働なしには、収束も除染作業もできない!
樋口健二さんの講演 4月21日
4月21日、原爆資料館地下で、報道写真家の樋口健二さんによる「原発労働者の被曝問題」に関する講演会があった。
樋口さんは、これまでに50万人の労働者が原発に関わり、その内の14万2千人が放射線被曝をし、既に数百人単位の人たちがこの世を去り、“原発ブラブラ病”というわけのわからない病気に苦しむ人たちが日本列島に想像もつかない程存在している。加えて、労働省も厚生省も原発内労働者の実態を把握していないのが現実である、と、次のような事例を挙げて報告された。
福島原発ができて、「簡単な清掃の仕事があるから」と誘われた石井義雄さんは6ヶ月の間毎日、汚染のひどい所で働く。「ゴムカッパのような服装でいろんな計器を持たされてよ。アラームメーターが何ミリレムかわしは知らんが確か十分ぐらいでピーピー鳴るような作業場だった。熱いの何の汗びっしょりでよ。マスクだって入る時はかぶってるんだが、息が苦しいやら前が見えんやらではずさにゃあ仕事にならん」と。
石井さんは、年間被曝許容量5千ミリを超えたことは間違いないが、本人には何ミリかは伝えられていない。また、放射線管理手帳の存在すら知らされていなかったのだ。この石井さんは何の保証もなくまもなく解雇された。身体がだるくてしばらくブラブラするも、休んでばかりおれないので東京へ出稼ぎへ出る。その後会社から「半年以上経過しているから大丈夫でしょう。4千ミリレム放射能を吸っても平気だろう」というので、近くて慣れた仕事という思いで再び福島原発に。しかし79年のスリーマイル島事故を知り退職。何度も誘いを受けるがきっぱり断ったという。
樋口さんは、「原発は近代科学技術の結晶で、あたかもコンピュータのみで動いているかのような錯覚を私達に与えますが、コンピュータ・ルームは電力会社の社員が働く清潔で安全な場所です。原発は、定期点検や事故・故障の時に、原発の中でモップと雑巾で放射性物質の拭き取り、放射能ヘドロの掻い出し、ひび割れした配管の補修などの作業を行う多くの労働者がいなければ動きません。原発はハイテクの固まりに見えますが、モップと雑巾の仕事がなくては動きません。定期検査や事故・故障時には1基の原発で1日1000人以上の労働者が働いていますよ」と。
加えて深刻なのは、そうした危険な労働現場で働く労働者は、ひ孫受けの下にいる人出業と言われるいわゆる親方のもとで、寄せ場から集められた人たち・元炭鉱マン・過疎地の貧しい農漁民等々、どちらかと言うと社会の底辺に位置づけられている人たちがこき使われているということであり、彼らを皆国家公務員にするべきだとの持論を展開された。
原発は、ウランの採掘から発電まで、差別構造の上の成り立っていると言われているが、まさにそのことを再確認する講演であった。
齋尾 和望
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