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[5月号]時言 自民党改憲草案は「あなたを狙っている」
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2013/06/15
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時言 自民党改憲草案は「あなたを狙っている」
自民党改憲草案で、現行憲法97条が完全に削除されていることを考えていると、フランスの哲学者の「政治は結局世論が決める」という言葉と、「タクロン・チーバー」のことが思い浮かんだ▼「タクロン・チーバー」こと千葉卓三郎については、その昔色川大吉の「明治精神史」か何かで学び驚かされたのである。当時28歳のチーバーは、明治13年に私擬憲法草案(後日「五日市憲法草案」と呼ばれる)を作った。ルソー、モンテスキュー、ベンサム、ミル等々を読破し「憲法とは、時の政府に対する国民の命令」という立憲主義に立ち、全204条中150条もの人権保障の条文を位置づけたのである。それは西欧思想に学んで天賦人権説に基づいたもので、現行憲法97条「・・・基本的人権は・・・国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」に結実している▼それを「西欧天賦人権説に基づいている」からとし、「権利ばかり主張し、義務を果たさない悪しき日本人」の温床として自民党草案は削除している。具体には、言論・集会・出版の自由、生存権などの基本的人権を「公共の福祉」論とは異質の、「公益及び公の秩序」という統治論で制約を加える。まさに人権は天賦不可侵ではなく、国が法の範囲内で国民に認めるという明治憲法へと180度転換させられている。怖い世論の反抗を封じる狙いなのであろう▼加えて自民党案の天皇元首化・国防軍・国民の国防義務・憲法を守る義務等となれば、その論理構成そのものは欽定憲法たる帝国憲法に酷似し、それへの回帰そのものと言い得るのである▼早急に憲法をめぐる今日的状況を学習し、情報を発信し自民党改憲草案を包囲し封じ込めなくてはならない。無関心でいたら、いつか「あなたは『臣民』とされかねない」のですと。
(安保)
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